白いものには、光だけでなく、喪失の気配も宿る。
2024年にノーベル文学賞を受賞した韓国の作家、ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』が、三浦透子の朗読によるオーディオブックとしてAudibleで配信されている。
本作は、朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の断章からなる物語。生後まもなく亡くなった姉の記憶を起点に、白いもののイメージをたどりながら、喪失、祈り、歴史、再生へと静かに触れていく。
おくるみ、産着、雪、骨、灰、米と飯。そこに現れる白は、清らかさだけではなく、失われたものの気配を宿している。
ハン・ガンの文章には、どこか息を潜めるような静けさがある。斎藤真理子の翻訳で読まれてきたこの作品を声で聴くことは、言葉を「読む」こととはまた違う、もうひとつの入口になる。

ページをめくるかわりに、耳を澄ます。
目で追うかわりに、声の余白に身を置く。
文学が声になるとき、そこには情報を効率よく受け取るための時間とは別の何かが生まれる。移動中や家事の合間に楽しむだけではなく、むしろ言葉のほうへ自分を委ねてゆく心地よさ、そして痛み。
『すべての、白いものたちの』は、そうした聴き方にふさわしい一冊かもしれない。
Information: 『すべての、白いものたちの』Audible版
Official site: 河出書房新社
Images courtesy of Audible / 河出書房新社


