太陽光を美しい体験に変えるソーラーアート

マーヤン・ファン・オーベルのソーラーアート作品Ra
ソーラーアート作品「Ra」。半透明のフィルムに有機太陽電池を組み込んだ、夜に灯るソーラータペストリー。

太陽光を、発電のための技術としてだけでなく、色や光、時間の移ろいを含む体験として見せるソーラーアート。そのデザインを手がけるオランダのソーラーデザイナー、Marjan van Aubel(マーヤン・ファン・オーベル)の作品には、サステナビリティを美意識の側から捉え直す視点がある。

ソーラーパネルは、通常であれば機能を果たすための装置だ。けれど彼女の作品では、光を受け止め、蓄え、再び空間へ返すためのメディアになる。そこでは、エネルギーは目に見えないインフラではなく、人が見て、過ごし、記憶するものとして現れる。

ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んだマーヤンは、サステナビリティ、デザイン、テクノロジーを横断する実践で知られる。彼女の作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)やパリのポンピドゥー・センターにも収蔵されている。

マーヤン・ファン・オーベル
Marjan van Aubel(マーヤン・ファン・オーベル)。1985年オランダ生まれのソーラーデザイナー。サステナビリティ、デザイン、テクノロジーの分野を横断する実践で知られる。

代表作のひとつ「Ra」は、薄膜の有機太陽電池(OPV)を色彩やパターンの一部として半透明のフィルムに組み込み、日中に受けた光を電気エネルギーへと変換・蓄電するソーラータペストリー。夜には、そのエネルギーが作品内部の光源として再び放たれる。

もうひとつの「Sunne」は、窓辺に吊るすサンライトアート。日中に太陽光を取り込み、夜にはそのエネルギーで発光する。太陽電池そのものが明るさの変化を感知し、時間帯や光の差し込み方に応じて、光のトーンを自然に変えていく。

どちらも、ソーラーエネルギーをただ効率の問題として扱うのではなく、日中の光、夜の明かり、そこに流れる時間をひとつの体験として結び直している。

ソーラーアート作品「Sunne」。太陽光を取り込み、明るさの変化に応じて光のトーンを変えるサンライトアート。

サステナビリティは、技術や制度だけでなく、日々の感覚や美意識とも深く結びついている。再生可能エネルギーを遠い課題としてではなく、人が見て、触れ、そこに留まりたくなる体験として見せる。ソーラーアートの核心はそこにある。

日本では、Do it Theaterが「Solar Placemaking」を始動する。ソーラーアートを軸に、人が集い、時間を過ごす場をつくる構想だ。その最初の機会として、2026年5月25日から6月4日まで、下北沢の商業空間「reload」エントランスホールで「Ra」と「Sunne」が日本初展示される。

都市の余白に太陽光を置き直すこの試みは、エネルギーの未来だけでなく、場所の記憶をどうつくるかという問いにもつながっている。

Information: Do it Theater / Solar Placemaking
Images courtesy of Do it Theater / Solar Placemaking